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2013年7月5日金曜日

乳やりソングのススメ

 我が家は親子三人暮らしの、いわゆる核家族だ。お互いの両親は遠方で、近所に友人もいない。入園前は、密閉度の高い都会のマンションの一室で、理屈も常識も通じない赤子と、たった二人だけの毎日だった。産後うつや虐待のリスクも高いとされる孤独な子育て、いわゆる「孤育て」である。

 息子が生まれたのは寒い冬だった。窓の外はどんよりと薄暗く、体調は戻らず、赤子は昼夜問わず泣き続ける。ホッとできるのは、授乳のときくらい。
 一心に乳を飲む息子の姿はとても愛おしいが、心身ともに疲れ果てているせいか、どうしても気分は沈みがちになる。マズイ。これは良くない徴候だ。どうしよう。そうだ、歌おう。歌うしかない。

 「飲ませて〜、ください〜♪」

 口から出てきたのは何故か演歌だった。飲む、というワードがおそらく脳内でリンクしたに違いない。歌ううちに興が乗って、つい声を張り上げてしまう。

 「外はふ〜ゆの〜あめぇ〜♪」

 誰もいないマンションの一室で、乳飲み子を抱え、ひとり演歌をうなる新米母。「孤育て」だからこそできる芸当といえよう。味をしめた私は「乳やりソング」として使えそうな歌を探したが、やはり「飲む」といえば演歌系が強い。あまりテンポの速い曲は疲れるので、そういう意味でも演歌はピッタリである。『氷雨』『酒と泪と男と女』『男と女のラブゲーム』……他にもあったら教えてください(笑)。

 大切なのは、母親自身が少しでも元気になること。歌うという行為は心を癒す効果がある。自分が心地よくなるために、鼻歌気分で少しコミカルな歌を選ぶのも、気持ちが明るくなって良いと思う。
 泣く子をあやすときに私がよく歌ったのは『サザエさん』。赤子を左右に軽く揺らしながら「今日もいいてんき〜♪」。もちろん伴奏は赤子のギャン泣き。明るくなけりゃやってられない、というのもまた真実だ。「ひみつのアッコちゃん」の『すきすきソング』もよく歌った。歌詞の「アッコちゃん」の部分を子どもの名前に替えて「○○ちゃーん、すきすき〜♪」とホッペをスリスリするのもイイ感じだ。
 寝不足で朦朧とした頭で、珍しく泣きもせず穏やかな息子を腕に抱えながら、ぼんやり窓の外を眺めるときに似合うのは、こんな歌だろうか。

 「きみとで〜あ〜えた奇跡が〜♪」

 ずっと家の中で、子どもと二人きりで過ごしていると、だんだん現実感が薄れてくる。未来を生きるこの子なら、空も飛べるような気がしてくる。

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