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2013年8月1日木曜日

忘れえぬ夏

 今年の夏は暑いんだろうか。まだ判然としないけれど、どうやら「あの夏」ほどではなさそうである。それだけでもうホッとした気分になる。二〇一〇年、記録的猛暑だったあの夏。息子は生後六ヶ月だった。

 朝、息子が起きた後のベビー布団から「ビシャッ」と水の感触が。え? 何かこぼした? それともオムツからおしっこが漏れた? でもこんな大量に?
 「ビシャッ」の正体は、息子の汗。ちょうど頭が乗っていたあたりを中心に、グッチョリと人のかたちの汗だまりになっていた。まるでマンガみたいだ。

 ただでさえ赤ん坊の汗の量は凄まじい。話には聞いていたが、これほどとは。通っていた小児科で相談したら「子どもはそういうもの」と一笑に付されてしまった。が、とにかく新米ママは驚くこと請け合いである。母子というのは抱っこや授乳でやたらと密着せざるを得ない、というのがまたツライ。
 前にも書いたが我が家は「孤育て」。息子とほぼ二人きりで過ごす夏(猛暑)。「もう明日の天気とか知りたくない。この猛暑がいつ終わるか、それだけが知りたい」。当時、私が日記に書いた言葉である。「猛暑のトンネル」なんて言われてたなあ……。

 もうひとつ、汗の季節になると困るのが、肌のトラブル。育児雑誌による「赤ちゃんの肌トラブル対策」特集は夏の定番だ。まだ皮膚が弱い赤ん坊は、あせもや湿疹に見舞われやすい。息子の場合、肌トラブルは一歳の夏がピークだった。
 次から次へと現れる湿疹。シャワーは一日四〜五回、せっせと浴びせて服を取り替え、皮膚科で処方された薬を欠かさず塗っても、翌朝また悪化していたりすると、本当に泣きたくなった。自分の費やした手間や努力は無意味なのかもしれない、と感じる瞬間というのは、子育てに限らずツライ。

 しかし翌年になると、湿疹も(出るには出るが)やや落ち着いた感があった。少しずつ肌も強くなっているのかもしれない。汗も、あのバケツをひっくり返したような汗は、今ではほとんどかかなくなった。とはいえ油断するとすぐ、あせもが出る。ちなみに息子は、かかりつけ医から「肌が弱い」とのお墨付きである。アゴが小さかったり肌が弱かったり、息子もいろいろ大変だ。

 私にはもうひとつ、忘れられない夏がある。東京へ出てきた最初の夏。住んでいたアパートには、エアコンがなかった。うだるような暑さの中、田舎者の目には信じられないほど近接した隣家から響く室外機の音をうるさく聞きながら、大きな不安ともっと大きな希望を胸に、喘ぐように息をしていたあの夏のことも、たぶん一生忘れないと思う。

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