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2013年8月27日火曜日

なつのおともだち

 フランス原作の絵本『うっかりペネロペ』のアニメシリーズに、「ペネロペのなつのおともだち」という作品がある。両親と一緒に夏の山へ遊びにきたペネロペは、そこでユリスとアリスという兄妹に出会う。「一緒に遊ぼう」と誘われて、宝探しごっこをする三人。日が暮れるまで夏の山を駆け回る。
 最近の息子は毎日のように、この作品を観ている。食い入るように真剣だ。とてもお気に入りらしい。

 「なつのおともだち」というタイトルは叙情的だ。ユリスとアリスは、遊びにきた夏山の、ここでだけ会える友だちなのだ。偶然会って、偶然一緒に遊んだだけで、それぞれの家へ帰ってしまえば、おそらくもう会えない。それぞれ別の日常が待っている。
 一緒に観ながら、かつて出会ったそんな「おともだち」たちを思い浮かべる私。毎年夏に出かけていたキッズキャンプで仲良くなった女の子とは、けっこう長く手紙のやりとりが続いた。
 都会に暮らし、中高一貫の私立女子校へ進んだ彼女は、田舎の公立校に通う私には憧れの匂いがした。しかし彼女がエスカレーター式で有名女子大へ進学したあたりで、連絡が途絶えてしまった。お互いの人生が、置かれた環境や目標が、手紙のやりとりを続けるにはあまりに違いすぎたのかもしれない。

 息子は自分も「夏の山」へ行きたくてたまらない。自分も「なつのおともだち」と一緒に遊びたいのだ。「あそこへ行けばいいんだよね」と、画面の中を指差す息子。「歩いて行くんだよね」と言うのは、ペネロペが歩いて登場するからだろうか。
 「そうだね。あそこへ行けば会えるね」と答える私。「でも歩いては行けないかな」。「そっか」。黙ったまま、再び画面に目をやる息子。
 普段、一緒に遊んでいる友だちと「なつのおともだち」は、何が違うんだろう。あそこへは、どうやったら行けるんだろう。どうしてママは連れていってくれないんだろう。あそこへ行けば、おともだちに会えるはずなのに。

 「なつ」が醸し出す非日常感。青い空に広い草原、トンボや湖、ヨットにベンチ。そこだけで生まれるスペシャルな体験と、一期一会の切なさ。
 きょうだいという存在への憧憬、宝探しのワクワク感。夢と現実、できることと、できないこと。たった五分弱の映像が、リアルとフィクションのはざまの世界に住む息子に、多くのことを教えてくれる。
 その小さな身体にいろんな感情を育みながら、人の内面は豊かになっていくのだろう。夏はもう終わるけど、画面の中の「おともだち」にはフィクションでしか会えないけれど、きみにとって大切な友だちには、きっとどこかで会えると思う。

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