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2013年10月18日金曜日

愛と勇気だけが

 テレビアニメのスタートが一九八八年というから、お茶の間への登場は思いのほか新しい。私も子どもの頃に見た記憶はない。けれど、あの赤鼻の丸い顔と、テーマ曲の[愛と勇気だけがともだちさ♪]というフレーズは、いつしか脳裏に棲みついている。

 アンパンマンについて思うとき、まず浮かぶのはその名前の凄さだ。「あんぱんまん」は言えるけど「パパ・ママ」は言えない、そんな子の話をよく聞く。息子も「あんぱんまん」の方が早かった。子音の繰り返しである「パパ・ママ」は、意外と難しい。
 作者であるやなせ氏が「幼い子にとっての言いやすさ」まで考慮したのかはわからない。けれども「アンパンマン」は「あんぱんまん」であったからこそ、ここまで人気者になった、そんな気がする。

 アンパンマンは静かに深く速やかに、子どものいる家庭に現れる。我が家にも、気づけば沢山のアンパンマンがいる。人形、ハンカチ、オモチャのバス、パジャマ、DVD。そのほとんどが頂き物だ。
 スーパーへ行けばアンパンマンの描かれた商品が、子どもの目線にビッシリ並んでいる。子どもが「あ、あんぱん!」と指差すので「え、どこ!?」と周囲を見回すと、道の反対側にあったファミレスの幟(のぼり)に、アンパンマンとその仲間たちがいた。
 「すごい、よく見つけたね」。思わず言う母。まだ言葉もおぼつかない子は、母の反応が嬉しくて、見つけるたびに大喜びで指差す。「あ、あんぱん!」
 病院や施設のキッズエリアで流れる映像は大抵、アンパンマンだ。アンパンマンがいれば、子の機嫌はしばらく持つ。「母たちのノーベル平和賞」がもしあれば、アンパンマンに進呈したいくらいだ。

 アンパンマンと仲間たちのネーミングはわかりやすい。食パンならしょくぱんまん、カレーパンならカレーパンマン。見かけも名前もそのまんまだ。子どもも大人もお年寄りも、一度教わればすぐわかる。
 だから、子どもとのコミュニケーションの場に、簡単に仲間入りできる。余計な知識は必要ない。アニメも絵本も知らなくても、アンパンマンは困っている人を助ける、子どもたちの味方。それで十分だ。

 誰も傷つけない世界観について、私などが語るまでもないだろう。アンパンマンは、はっきり言って弱い。歌にもあるように「やさしい」ヒーローであり、愛と勇気「だけ」が友だちなのだ。
 なぜ「だけ」と敢えて入れたのか、つい深読みをしてしまう。やなせ氏は、何を「ともだちじゃない」と言いたかったのだろう。アンパンマンになくて、他のヒーローにあるもの。何らかの「力」……?
 もちろん、そんな思索は野暮なことだ。アンパンマンは困っている人を助ける、やさしいヒーロー。それで十分なのだから。

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