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2013年10月29日火曜日

秋晴れの公園で

 秋晴れの公園。子どもたちが駈けていく。これだけの広さの、しかも芝生の公園は、都内では数えるほどしかない。あっという間に豆粒サイズになる息子の姿を目で追いながら、屋外でこんなに息子と距離が離れたことがあったっけ、とぼんやり考える。
 息子と公園へ行くのが、あまり好きではなかった。今もそうだ。公園遊びは、パパに任せてしまう。だから息子は週末になると、パパと公園へ行きたがる。私に公園行きをねだることはもう、ほぼない。

 公園が苦手な理由の一つは、かつてそれが義務だったからだ。誰が強制するわけでもないが、赤ちゃんを連れて散歩に行くべしと、どの育児本にも書いてある。孤独な都会の新米母としては逆らいにくい。
 住宅街を抜けて近所の公園へ行く毎日が、私には辛かった。「公園デビュー」という言葉が昔流行ったが、公園で出会うママさんは皆、笑顔で親切で、だからそれは理由ではない。

 「今日はどこへ行こうか……」。朝起きるとすぐ、こんな思いが頭をよぎって憂鬱になった。雨の日は、雨を理由に外出しなくて済むと思うとホッとした。近所の児童公園を三つほどローテーションで回して、それでも本当に飽き飽きして、とはいえ気晴らしに頻繁に遠出するほどの気力やお金はない。
 そこまで公園が辛かったのには、もう一つ大きな理由がある。息子は、公園遊びが苦手な子だった。行きたがるのに、遊べない。遊ぼうとしない。

 遊具の側にいても、他の子が来たら逃げてしまう。先客がいれば遊具に近寄ろうともしない。滑り台もブランコも、一人では怖がってやろうとしない。どう見ても息子より小さな子が、勢いよく滑って遊んでいるのに、親にしがみついて離れようとしない息子。一体、何のために公園へ来たのか。
 息子より明らかに小さな子が、よちよちと楽しそうに歩いている。息子はまだ歩く気配もないのに。比べたくもないのに他の子と比べてしまう、そんな自分にも心底ウンザリして、私は次第に公園から足が遠のいた。買い物帰りに息子が寄りたがっても、「どうせ遊ばない」と思うと寄る気になれなかった。

 クラスメート数人と訪れた秋の公園で、息子は友だちの背中を追って走り回った。友だちとボールを取り合い、名前を呼ばれて滑り台に駆け上り、「せーの」で滑り降りる。苦手なブランコも一人でこぐ。
 こんな息子は初めて見た。入園して、まだ半年なのに。園生活ってすごい。おともだちってすごい。親のことなど一顧だにせず、一目散に駈けてゆく息子の背中を、私はどれほど見たかったことか。
 夢が叶った一日だった。沢山の後悔と反省と申し訳なさを覚えながら、少しでも長くこの光景を見ていたい、と思った。

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