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2014年2月20日木曜日

熱を出した日

 38度の熱が出た。自分が熱を出したのは久しぶりだ。朦朧と横になり、憑かれたようにスマホを繰る。こんな日々が前にもあったなあ、と思い出す。
 出産直後の産院。ベッドに横たわったまま、やはり憑かれたように携帯電話のキーを押していた。理由は簡単。ほかに何もできないからである。

 予定日より早い出産で、満を持して入院とはいかなかったこと、そして産院が携帯電話の持込可(マナーモード、通話は指定場所のみ)だったこともあり、バタバタと産んで赤子とともに入院室に入った私の手元には、ただ携帯電話だけがあった。
 日に何度も「あれ持ってきて、これ持ってきて」と家族にメール。足りないベビーグッズはモバイルのECサイトで注文。体を起こすのはまだ辛く、寝ているしかない退屈な時間はひたすらサイトチェック。一日中、小さな四角い画面を凝視していた。
 通信費が最大で20万円超(!)と表示されたこともある(支払いは定額のみ)。もはや立派な依存だ。ロクに動けず外へも出られない当時の私にとって、携帯電話の小さな画面はほぼ唯一の情報源であり、自分と外界とをつなぐ窓だった。多少の(?)依存も無理はないかな、という気はする。

 退院して家に戻っても、携帯電話を手放せない日は続いた。相変わらず起き上がるのは辛く、外出もできず、買い物も気晴らしも携帯電話が頼りだった。
 授乳しながらワンセグもよく観た。ワンセグは画面に文字が出るので音を消した状態でも楽しめて、寝ている赤子や家族を起こさずに済むのが利点だ。息子が生まれた年の大河ドラマが『龍馬伝』だったこと、そしてバンクーバーオリンピックの開催年であったことを、私はたぶん一生忘れない。
 真冬の深夜、乳を飲む息子を抱えて朦朧としながら、暗闇に光る小さな画面の中で跳ぶ真央ちゃんを観ていた。その華麗な姿も一生忘れないと思う。

 熱を出したからといって、寝ているわけにはいかないのがママ稼業らしい。今は授乳もないし、一人で遊んでいてくれるけど、やはり幼児では万が一を思うと、とても眠りに落ちるどころではない。このヒリヒリした感覚も出産直後の頃を思い起こさせる。
 家族が帰宅して、ようやく少しまどろむ。息子は「ママにおくすりつくってあげる!」と何やらゴソゴソ。「なんて優しい子!」と感激するところだが、私が寝ているのをいいことに髪の毛を引っ張ったり、枕元で飛び跳ねたり(……頭痛いんだってば)。体調の悪い人を気遣う、というメンタリティは、まだ未成熟らしい。ま、仕方ないか。四歳だしね。
 それでも「ママだいじょうぶ?」と頭をなでられると、じんわり幸せな気分になる。ここにいるのは喜びも辛さも我が事のように感じてゆく、立派な一人の「家族」なのだなあ、と思えて嬉しくなる。

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