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2014年2月26日水曜日

涙をふいて

 園生活にもずいぶん慣れ、最近は預かり保育やシッターさんにお世話になることも増えた息子だが、誰に預けてもほぼ百%、返ってくる言葉がある。「おとなしくて、本当にいい子ねえ」。

 褒め言葉なのだが、私は毎回、複雑な気分になる。息子は何というか、とても「外ヅラ」のいい子どもだ。大人受けがいい。誰に似たんだろう。
 おっとりした性格。話しかけられれば、はにかんだ笑みで応える。電車では静かに座り、飲食店でも行儀よく食べる。公の場所で騒ぐことは滅多にない。「うらやましい」という声が聞こえてきそう。確かに、連れ歩くのが比較的、楽な子ではあると思う。
 電車で騒ぐ他の子に眉をひそめた女性が、息子を見て言う。「ぼく、ちゃんと座ってて偉いわねえ」。両手を膝に置き、嬉しそうにニマーッと笑う息子。

 どうすれば大人に褒められるのか、わかって行動している。「いい子ぶっている」。少なくとも親の目には、そんなふうに見えることがある。
 だとすれば、私にも覚えがある。私は、大人に嫌われるのを極度に恐れる子どもだった。よその大人の前では、嫌いな食べ物も好きなフリして食べた。いい子ね、と言われることが心の支えだった。
 そうか、私に似たのか。そんなことはしなくていい、子どもらしくいてほしいのに。「いい子ね」と言われるたび、そんな思いが胸をよぎる。

 「偉いねえ」「すごいね、よくできたね」「わあ、お兄ちゃんだねえ」。褒め言葉は息子の栄養だ。その言葉をもらうために、幼い彼は少なからず自分を抑えている。どこかで我慢をしている。ある程度は成長に必要な過程かもしれないけど、度が過ぎれば大きな心の負担になる。
 子どもの世界では「いい子」は決して歓迎されない。いい子ぶった「子どもらしくない子ども」を好まない大人も少なからずいる。友だちと大声ではしゃぎ、周囲を顧みずワガママを言う「子どもらしい子ども」のほうが、この世は生きやすいんじゃないか。そんな気がして、何だか心苦しい私である。

 お迎え時。どの子もママを見て笑顔で飛び出してくるのに、息子だけが大号泣。「安心するんでしょうね」。先生は言った。慣れない集団生活で、うまく自己主張できない場面も多いのかもしれない。
 「明るくてまっすぐで、何でも素直に取り組みます」「お友だちが落としたクレヨンを拾ってくれます」。先生の言葉から、色んな息子の姿が見えてくる。ママ友さんたちには「癒し系男子」というあだ名も頂いた。家では大声で歌って踊って走り回り、我が強くて見栄っ張り。「おとなしくていい子」なんて、そんな単純じゃないよ、とでも言いたげに。
 どんな子が出てくるんだろう、と思い巡らせた十月十日。やっと会えたのは、少し恐がりだけど好奇心旺盛で、ご飯と遊びと褒められることが大好きな、優しい男の子。さあ、涙をふいて。この先どんな君に出会えるのか、ママは楽しみで仕方ないんだから。

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