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2014年8月22日金曜日

見知らぬ故郷

 「出身地はどこですか?」と訊かれたとき、「名古屋です」と答えることが多い。厳密に言えば違うのだが、面倒なのでつい、こう答えてしまう。
 余談だが、東京で「じゃ、関西ですね」と返されて絶句したことがある。「名古屋って何県だっけ!?」というのもあった。まあ私も全国の都道府県名を白地図に記入する自信はないので人のことは言えない。

 ところで東京に来て相当経つが「私も名古屋です」という人にまだ会ったことがない。代わりに、転勤などで名古屋在住経験がある人には何人か会った。
 彼らは嬉しそうに「懐かしいなあ名古屋。いいところですよね」なんて言ってくれる。そして「ほら、どこそこの店が……」とローカルな思い出話をしてくれるのだが、いつもポカンとしてしまい申し訳ない気持ちになる私である。
 進学のため18歳で県外へ出た私にとって、名古屋は「休日に親が車で連れて行ってくれる場所」に過ぎなかった。通学や通勤の経験もない。分かるのは大きなデパートや地下街、ライブハウスやコンサートホールくらいで、「味噌煮込みうどん」も「ひつまぶし」も、初めて食べたのは東京へ来てからだ。
 地下鉄や駅の名前も分からないし、土地勘もない。もう「名古屋出身」を名乗るのは、やめた方がいいかもしれない……すいませんラクなのでつい……。

 「女の子は県外へ出ると、二度と戻って来れないよ。それでもいいの?」。高校三年生の三者面談で、担任にこう言われた。就職口がない、という意味だ。
 「どうして外へ出るの? 名古屋に何でもあるのに」。同級生にも散々言われた。保守的な土地柄で、大都市にも近い。私よりずっと成績のいい子が、地元の女子短大に合格して喜んでいる。外へ出たい一心だった当時の私には、とても不思議な光景だった。
 「地元を出る子と残る子は、ハナから決まっている」。こんなエッセイを読んだことがある。何だか、すごく分かる気がした。もちろん、進路は自由だ。大切なのは、望む道を進むことなのだから。

 帰省して家族で吉良(きら)へ。ホテルの土産物コーナーにある「西尾名産」の文字に、どうにも違和感が残る。そういえば実家から一色(いっしき)の鰻が届いたときも「西尾」の文字に戸惑ったっけ。
 三河湾沿いの観光地である吉良も、鰻の名産地である一色も、少し前の大合併で西尾市に編入されたと分かっていても、いや一色は一色であって西尾じゃないでしょ、なんて感覚が抜けないのは、むしろ県外へ出た人間だからかも、なんて思ったり。
 今では日本ガイシホールと聞いても「それ、どこ!?」。いろんな名前が変わりすぎて、思い出も分断されて、もう何が何やら、中日ファンの相方は、私がナゴヤドームではなく「ナゴヤ球場」で中日戦を見たことがあると言うと羨ましがる。少し嬉しい。

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