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2014年12月10日水曜日

冬のミステリー

 江戸時代からあると言われても疑わない巨大な針葉樹の脇に、赤茶色の三角屋根。電線を軽やかに渡る影は、ネコ!? いや、違う。まさかイタチ!?
 窓に映る景色は、イギリスかどこかの田舎のよう。見知らぬ町へ迷い込んだような気分になってくる。

 しかし残念ながら(?)ここはニッポン、大都会TOKYO。目下、しがない仮住まいの身である。息子の幼稚園へ通える範囲で、という条件で紹介されたというだけの理由で、私たちはここへ越してきた。鬱蒼とした木々が残る古い住宅街。高台なのにどこか湿り気を帯びた、不思議な空気が流れている。
 仮住まいとはいえ生活がある。電気水道ガスにインターネット、郵便局へ転送届を出してアマゾンの届け先住所を変更して……、でも、あくまで一時の仮住まいだから、転居ハガキを出すほどでもない。
 そんな、宙ぶらりん状態で迎える年の瀬。一気に厳しさを増した木枯らしが身に沁みる。ま、慣れてるけどね。ずっと、そんな人生だったし(涙)。

 なのでこの一見、都会とは思えぬ窓外の風景は、思わぬ収穫だった。豊かな緑に映えるシャビーな一軒家。しかしメルヘン気分はあっさり打ち砕かれる。玄関周りには、バリケードのようなゴミ袋の山。そう、ここはいわゆるゴミ屋敷(?)らしいのだ。
 人の気配はほとんどしない。が、時々、夜になると窓に明かりが灯る。住人はいるようだ。ぶっちゃけ今の時代、珍しくもない話ではある。世の中にはいろんな家があって、いろんな事情がある。天井までゴミが積まれた空家、放置され荒れ果てた大豪邸。
 最初は驚いたけど、すぐ慣れてしまった。常識外の存在に違和感を持たないのは、こちらも仮住まいという非日常を生きる身だからかもしれない。

 ある日の朝、息子を園へ送るため外へ出ると、件の家の前に水道屋さんの車が止まっていた。作業服姿の男性が二人、玄関前の通路を行き来している様子を目の端に捉えつつ、自転車で走り去る私たち。
 ある日の午後、今度はパトカーがやってきた。中から数人の警官が出てきたかと思うと、ゴミ袋のバリケードを越えて一斉に突入! おお!!
 しかし気づけば、周囲には静寂が戻っていた。一体、彼らは何を見たのか。何が起きたのか、なぜ警官が来たのかは結局、分からずじまいだった。そして夜には何事もなかったように、窓に明かりが灯る。
 相方は先日、バリケードを超えて家へ入っていく女性の姿を見たという。前の通路を掃き掃除する男性には何度か挨拶をしたが、聞こえていないかのように見向きもしない。
 古い住宅街は人の想いが強すぎて、いろんなものが見えてしまう。分からないものは分からないままで、とどめておくのも悪くないと思うのも、仮住まいのせいなんだろうか。

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