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2015年2月18日水曜日

青いてるてる坊主

 10年以上前の、まだ独身だった頃。実家の父が長期出張で家を空けると、母はよく東京へやってきた。
 一緒に繁華街を歩き、買い物をし、ご飯を食べる。時にはホテルに泊まったりもした。18歳で家を出た私は、そんな「仲良し母娘」のような行動とはずっと無縁だったから、娘としてささやかな贖罪も気持ちもあった。母も嬉しそうだった。
 初めて東京ディズニーシーへ行ったのは、そんな折である。開業して数年。その日は平日で、天気は雨。母と二人、舞浜へ向かう電車に乗った。「少しは空いているといいね」と話しながら。

 今なら分かる。「雨だから空いている」が、大間違いであることが。特に平日は、遠方からの観光客など「当初から予定していた」客が多く、雨だからといって客足は鈍らない。加えて、雨のため誰もが皆「屋根のあるところ」を目指す。私たちが目にしたのは、土産物店にギッシリ群がる人、人、人……。
 身動きすら取れず、とても店の品物を見るどころではない混雑ぶりの中、飛ぶように売れていたのが「ポンチョ」だった。確かにこの天気で、それでも楽しむためには必須かもしれない。背中にミッキーとミニーが描かれた、おそらくこの状況下でなければ手は伸ばさなかったであろうポンチョを、私と母も購入した。三千円以上はしたように記憶している。

 私の中のディズニーシーの記憶は「母と一緒で大雨で、三千円以上するポンチョを買った」で終わりである。他には何も覚えていない。母が「これはこれで、いい思い出」と言ってくれたのが救いだ。
 そんなポンチョはその後、押し入れの奥で忘れ去られていた。大判で肉厚で、結構かさばるせいか、雨具として普段使いするには至らなかったのだ。
 そんな「忘れられた」ポンチョを思い出したのは、雨の日も雪の日も息子を自転車で園へ送迎する生活が始まって、一年以上が経ってからのことである。

 自転車の雨具選びは難しい。何度かの失敗を経て悩んでいたある日、はたと思い出したのが例のポンチョだった。ともあれ引っ張り出して、かぶってみる。大きいのでコートの上からでもOK。広がるので自転車にも乗りやすい。なんだ、コレいいじゃん。
 難点は、お世辞にもオシャレとは言えない色とデザイン。フードをかぶって口紐を結べば雨対策はバッチリだが、傍目にはハッキリ言ってダサい。まるで「てるてる坊主」である。
 雨の日は、息子を、真っ青なてるてる坊主が迎えに来る。まるでペンキをぶちまけたようなド原色の青だ。背中にはミッキーとミニー。自転車の後部座席からよく見えるので、息子は結構お気に入りだ。てるてる坊主になった私は冷たい雨に震えながら、これはこれでいい思い出かも、なんて考えている。

2015年2月5日木曜日

あったかい君に

 「あったかいんだからぁ〜♪」と息子が歌う。「(あった)かい〜」の部分で、ふわっと息を抜くことも忘れない。園でみんな歌っているらしい。四、五歳の子ども達が「あったかいんだからぁ」と歌う様子を想像して身悶えする私。か、可愛すぎる……。

 子どもは季節を運ぶけど、流行も子どもが運んでくる。アナ雪も妖怪ウオッチもクマムシも、子どもがいなかったらここまで耳に留まらなかっただろう。そう思うと不思議な気分だ。
 売れてる曲が万人に届かない、と言われるけれど、少子化も理由のひとつなのだろう。園や学校は、流行が生まれる現場でもある。そこに身を置く存在が身近にいるだけで、意図せずとも耳に届くものがある。歌う息子を眺めながら、そんなことを考える私。

 そんな園の息子のクラスには目下、空前の「あやとりブーム」(!)が到来中だ。……何故あやとり。理由は不明だが、普段は「戦いごっこ」好きな男の子までもが、毛糸の輪っかを指にかけてキャッキャと大はしゃぎする姿は大変に微笑ましく心が和む。
 少し前には「おてがみブーム」もあった。紙に字らしきものを書いて、おともだちと渡し合いっこ。先日は息子の幼稚園カバンに、クラスの女の子からの「○○くんへ。○△より」と書かれた「おてがみ」が入っていて、女の子から手紙をもらったという事実以上に、その字の上手さに思わずうろたえた母。
 あの、ウチの子、まだ自分の名前も怪しいですが。お返事、受け取ってもらえるかしら(どきどき)。

 おともだちと一緒に新居近くの公園へ。すでに小学生で賑わっていたが、すぐに話しかけられて場に馴染む、我らが園児たち。「みんな仲間だ仲良しなんだ」という、昔の道徳の歌のフレーズを思い出す。
 危険だからと遊具が消えつつある時代、ここはブランコも鉄棒も回転ジムもある。年上の女の子たちに回してもらい、ジムの中で幸せそうに回る息子。
 「これ、宝物なの」。男の子が見せてくれたのは、パパからもらったという『ガンダム』の古冊子。思わず「懐かしい〜」と叫ぶアラフォーママたち。

 節分の日、仕事帰りに店先で「でんでん太鼓」を見つける。でんでん、と振り回して遊ぶ息子の姿が脳裏に浮かんだ瞬間、手を伸ばしてレジへ向かう。店側の「親ホイホイ」に、まんまと引っかかる私。
 帰宅後の息子に遊び方を教えると、さっそく大喜びで振り回す。頭には園で作った鬼のお面。もはや誰が鬼やら福やらわからないが、本人は大興奮だ。
 残酷なまでに正直な彼らの中では、携帯ゲームも流行歌も、懐かしい遊びも伝統玩具も同列なのだろう。好きなものに手を伸ばし、世界を広げることで、人生は豊かになる。楽しそうな息子の姿を見るだけで、母はじんわりとあったかい気持ちになれる。

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