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2015年3月16日月曜日

そこからか!

 子育てをしていてつくづく思うのは、人は何事も練習して身につけるのだなあ、ということである。
 泣くこと、乳を飲むこと。人の子が最初からできるのはそれくらいで、寝返りも立つのも歩くのも、年端も行かぬ赤子が必死で練習し身につけていくさまを、母は身近で目の当たりにする。それは結構、壮絶な過程だ。いや本当に「人」になるのは大変だ。

 頭の大きな息子は赤子時代、うつぶせで顔を上げるのからして大変で、すぐにガクッと頭が落ちる(重すぎて)。何度もトライするさまは、ほとんど筋トレである。見守る母はセコンド気分だ。
 三ヶ月に入った途端、寝返りの練習を始めた息子。何とか「くるっ」と回れても、元に戻れずうつ伏せのまま「ギャー!!」。起き上がっても、今度はぐるぐる転がって家具や壁にぶつかって「ギャー!!」。
 この頃は本当に目が離せず大変だった。寝ている息子の四方を毛布を丸めた防御壁で囲ったり。ちなみに五歳の今も「防御壁」は存在する(寝相……)。

 食に関する一連の訓練は、育児のハイライトではなかろうか。教えることが多すぎて、子にとっては覚えることが多すぎて、親子共々パニックになる。
 食べることが好きで偏食のない息子ですら、食事中は沢山の小言を食らう。「手じゃなく箸で食べなさい」「箸の持ち方が悪い」「口に物を入れたまま喋らない」「頬張ったまま次の食べ物を入れない」「茶碗は体の正面で持って、口元に近づけてから箸をつける。そうすればこぼさないから」「箸だけ遠くに伸ばすな。その拍子にみそ汁倒すなああ」……。
 そこからか。そこから教えんといかんのか。自分も、そこから教わったのか。ありがとう母ちゃん(感謝)。いわゆる「三角食べ」をさせようと必死で奮闘する相方を傍観しつつ、気が遠くなる母。

 「宇宙はね、空港からロケットに乗るんだよ」。宇宙はロケットで行く。空飛ぶ乗り物の駅(?)は空港だ。その二つの知識からこんな台詞を口走る息子に、思わず訂正を入れる母。「ロケットに乗るのは空港じゃないよ」。「じゃあ、どこから乗るの?」。
 「……日本なら種子島かな」。じゃなければNASAか? 「じゃあ、家から『たねがしま』行って、そこからロケットに乗って、宇宙へ行くの?」……違う。違わないけど違う。選ばれし人が努力を重ね、運も味方につけて、ようやく宇宙へ旅立てる、その現実をどう伝えたらいいのか。ああ面倒くさい。
 ひとまず勉強しろ(断言)。「うん。べんきょうってね、字を書くことだよ」。そうか。そこからか。そうだよな、まだ五歳だしな。どこで聞いたか「宇宙は楽しいよ」と言う息子に、「何にもないから楽しくないよ。オモチャも本も、空気もないし」と夢をぶちこわす母であった。ああ、もうすぐ春休み……(遠い目)。

2015年3月4日水曜日

僕のお店へようこそ

 園の行事のひとつに「お買い物ごっこ」がある。割とポピュラーな行事らしく、園によっては「お店やさんごっこ」と呼ぶこともあるようだ。
 売り物は園児たちが作る。色紙で作った食べ物、紙粘土のアクセサリー。売るのも園児、買うのも園児。当然、お金や財布も作る。要は園を挙げての壮大な「ごっこ遊び」。こりゃ楽しくないわけがない。数週間前から早くも大興奮の息子(←食いしんぼ)。

 ケーキ屋さん、お花屋さん、ドーナツ屋さん。園児たちの「将来の夢」には多くの「お店屋さん」が登場する。「いらっしゃいませ」「○○をください」「○○円になります」「ありがとうございました」。大人には退屈でしかない会話に、人生が始まったばかりの園児たちは胸をときめかせる。
 初めての「お買い物ごっこ」を終えた昨年、息子が持ち帰った「品物」を見た私は仰天した。せいぜい紙を丸めたパンとか、その程度のものを想像していたのだ。いや、何というクオリティの高さ!
 毛糸で見立てたスパゲッティナポリタン、今風のラーメンには焦がしネギ(!)をトッピング。オムライスは卵の「照り」まで表現してあり、よく見たら正体はセロテープだった。いや、凄い。間違いなく年長さんの作品であろう。
 もちろん年少さん制作と思しき「紙を丸めたパン」もある。か、かわゆい。このとき持ち帰った食べ物たちはその後、家での「ごっこ遊び」に大活躍してくれた。今ではその多くが破れてボロボロである。

 「食べること」と「工作」が大好きな息子を喜ばせようと、百円ショップでフェルトで作るケーキのキットを買う。息子はもう夢中で、早く作れと散々せがんだ挙げ句、残ったフェルトや糸を使って自分でも何やら作り始めた。生成りにピンクのフェルトを挟んで「イチゴクリームビスケット!」。黄色を挟めばバナナクリーム、茶色ならチョコクリームだ。あっという間に「ビスケット屋さん」開店である。
 息子にせがまれた相方が、折り紙とティッシュペーパーでくるくると「海苔巻き」を作る。上手い。というか、そんなことを思いつく発想力が信じられない。説明書通りにキットを作るくらいしか能のない私は「何故その才能を人生に生かさなかったのか」と口走り、相方に「大げさだなあ」と呆れられる。

 「いらっしゃいませ。この機会に、まとめ買いはいかがですか」。息子が家での「ひとりお店やさんごっこ」でこんな台詞を口にしたのは、消費税が上がる直前の頃だった。どこかのスーパーで聞いたのだろう。子どもは本当に耳が良くて困る。
 「君が小さかった頃、まだ消費税は5%だったんだよ」。将来、そんな話をする日も来るに違いない。そしてその頃には一体、何%になっているのか。いやはや、想像するのも恐ろしい……。

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