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2015年4月7日火曜日

おなまえ狂騒曲

 名前をつける。命名ではなく、持ち物などに「名前を書く」。入園入学を控えた子どもの親は、もれなくこう書かれたプリントを手にすることになる。「持ち物には、すべて名前をつけてください」。

 持ち物には、すべて名前をつける。親がこの一文を突きつけられた後に直面する混乱は、経験者以外の方々には今ひとつピンと来にくいかもしれない。
 私は自分が当事者となって初めて、この「持ち物に名前を書く」ことに関する諸々が、こそだて界において結構な商売(!)になっていることを知った。「マジック一本あれば事足りるんじゃないの?」と思いきや、そう簡単にはいかない奥深さが、そこにはあるのだ。いや本当に。

 とにかく「書く対象」が多様すぎるのである。カバンに帽子に服にハンカチ、クレヨンやハサミなどの文房具、弁当箱に箸に水筒。素材もサイズも恐ろしくバラバラな「持ち物」全部に等しく名前を書くだけでもマジック一本では無理がある。
 箸なら一本一本、クレヨンも当然一本ずつ、入れ物である箱もフタと本体の両方に。ビニール入りティッシュを持たせるなら、そのビニールにも。「すべて」という表現を、甘く見てはいけない。
 布地にマジックで書けば、文字がにじんでしまう。そこで活躍するのが、にじみにくい素材の「名前ラベル」。ラベルに名前を書き、縫製やアイロン接着で付ける。この名前ラベルがまた多種多様で、中には家庭用プリンタで印字できて洗濯も可能なもの、水回りグッズに使えるよう防水シール加工のもの、サイズやデザインも、選ぶのに迷うほど豊富だ。

 手書きに抵抗のある人向けには、前述の印刷用ラベルのほかに「おなまえハンコ」もある。少し前までは若干、贅沢な選択肢だったが、今では百円ショップでも見かける。文字と持ち手とインク、数百円でオリジナルの名前ハンコが作れてしまう。
 クラフト感を求める方には消しゴムハンコもおすすめだ。刺繍機能の充実したミシンをこの機に用意する方もいるかもしれない。それこそ費用をかければいくらでも、オシャレで可愛くて他の子と差別化できてオリジナルな「おなまえグッズ」が手に入る。面倒ならオール外注だって可能だ。いや、凄い。

 入園間もない年少さんはまだ「自分の持ち物」という感覚は希薄だ。他人のタオルを持ち帰った、他人の上履きを間違えて履いた、そんなとき、先生や保護者が気づけるように。それも記名の役割である。
 最初は見栄えを気にした親も、次第に理解してくる。可能な限りデカデカと、ハッキリ一目で分かるように。人様に迷惑をかけず、モノも無くさず無事に園生活を過ごすためには、いっそ「マジックでグリグリ」が最強かも、と思う三年目の春である。

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