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2015年6月29日月曜日

成長の連鎖

 園へのお迎え時。少しゆったりした服を着ていると、教室から出てきた女の子たちに聞かれることがある。「ねえねえ、おなかに赤ちゃんいるの?」

 彼女たちの目は期待でキラキラだ。だから私は、少し悲しそうな顔で答える。「ざーんねん。いないんだ」。「ふーん」。(ホントはいるんじゃないの?)なんて顔をしながら、別の事柄に興味を移していく女児たち。常に「お姉さんぶりたい」女の子は、自分より小さい子や赤ちゃんが大好きだ。
 余談だが時々「これ自腹だから。あはは」なんて答えるママもいて、気持ちはわかるのだがポカンとする園児を見るに、その自虐ギャグはたぶん通じていない。「冗談を冗談として受け止める」というのは結構、難しいらしく、下手すると「自腹ってなに?」と直球を食らって傷口に塩を塗る羽目になる(涙)。いや、子どもとの会話は気が抜けんよ……。

 「一人目は長かったけど、二人目はあっという間に大きくなる」。複数のママさんから、そんなふうに聞いた。いつ立つか、いつ歩くか、いつ話すかと待ち構えていた一人目に対して、二人目は気がつくと立ち、歩き、ペラペラと話し始める。
 上の子の入園時、まだ足取りもおぼつかない乳児だった弟妹が、年少組に入ってお兄ちゃん、お姉ちゃんの後を追いかけ始める。お迎え時はいつも下の子を抱っこヒモで抱え、常にマスク姿だったママさんが、歩くようになった下の子の手を引いて、にこやかに現れる。ゆったりと結わえた髪に薄いメイク。解き放たれた美しさに、思わずハッとする。
 歩くようになった下の子ちゃんは、ベビーカーの中ですやすや眠る、別の園児の「下の子ちゃん」に興味津々で近づいていく。あっという間に数ヶ月がたち、ベビーカーの赤ちゃんも歩き出す。つい最近まで抱っこヒモの中にいた「下の子ちゃん」が、すっかり姉目線で自分より小さな存在を見守っている。

 午後の園庭で繰り広げられる成長の連鎖。たった三年で感動している私だが、より長いスパンを見守る先生方は、そして園庭の木々は、何を思っているのだろう。時々、そんな思いに囚われる。
 かように下の子は他人に揉まれて育つ傾向があるから、我が子の「コミュ力」(!)に悩むママたちからすれば環境の違いが気になるけれど、でもそれ以上に本人の資質が大きいのでは、と感じることも多い。社交的で活発な長男長女や一人っ子が、私でさえ何人も思い浮かぶ。
 思い込みや偏見ではなくフラットな目で。そう自分に言い聞かせる、一人目で手一杯の母。まだ先は長いしね。なんつうか、大きくなっちゃったなあ、というのはあるなあ。ぷくぷく赤ちゃん時代の息子を懐かしく、少し寂しく思い出す。でも前を向かなきゃね。今さら乳児の相手はムリ(体力的に)。

2015年6月11日木曜日

SING!!

 図書館で息子が見つけてきた『セサミストリート』のCD。おそらく番組で使われた英語の歌が入っているのだろう、と深く考えずにいた私は、スピーカーから流れてきた歌を聴いて腰を抜かした。
 え、日本語!? ……そういえば何年か前に、日本語版が放映されていたような。当時は子どももいなかったので、残念ながら観た記憶はないけど。

 日本語にも驚いたが、もっと驚いたのは彼らの「声」だった。当然、日本の声優さんが歌っているのだが、あのエルモが、クッキーモンスターが、まんま日本語で歌っているとしか思えないのだ。……いやもう何というか、プロって凄い。
 英語版では、たとえ言葉が分からずとも(クッキーを貪り食う)行動だけで十分に変で楽しいクッキーモンスターが、日本語で「クッキー、たぁべた〜い!!」と絶叫するわけで、息子はもう大喜びである。
 収録曲は日本独自の楽曲が中心だが、中にはおなじみの歌もある。セサミの挿入歌として有名な『SING』も、ここでは日本語だ。原曲はカーペンターズ。かつてNHK『みんなのうた』でも流れていたそうだから、懐かしい方もいらっしゃるだろう。

 シング、歌おう、幸せが来るように。そんな歌詞を聴きながら、出産直後、睡眠不足で朦朧としながら歌っていた頃を思い出す。辛いときは、歌うに限る。誰に聴かせるわけでもなく、ただ自分のために。
 大きな声を出し、恥ずかしがらず、と歌は続く。同じ言葉を最近聞いたなあ、と記憶を辿る。園の有志のママさんコーラス。「ぜひご一緒に。恥ずかしいことはないですよ」という発起人の呼びかけに、準備した椅子が全く足りないほどの人数が集まった。
 試しに全員で歌ったら、先生も驚くほどの声量。「恥ずかしがる」なんて空気は微塵もない。今どきのママさんはカラオケで慣れてるし、コーラスの経験者も結構いる。恥ずかしい人は最初から来ないし。
 歌うときの姿勢、息つぎ、鼻濁音。先生が基本をレクチャーしていく。自分の声が、空気を震わせて響く。懐かしい感覚が嬉しくて、自然と声が伸びる。

 子どもは歌が好きだ。息子も耳コピで意味不明な日本語を歌っていた時代もあったが、今では歌詞もメロディもかなり忠実に再現する。符割りの複雑な最近のJポップもけっこう上手に歌う。家で私が作っていた歌を、その日のうちに歌い出すこともある。
 プロの音楽家による親子コンサート。一緒に歌う場面なのに、息子は蚊の鳴くような声だ。家ではガンガン歌うのに、外へ出ると萎縮してしまう。
 そんな息子を励ますように、私は声を張り上げる。歌おう、幸せが来るように。辛いことを忘れるため、そんな理由で歌う日が、君にもきっといつか来る。大丈夫、ママがついてる。おともだちもいる。一緒に歌おうよ。恥ずかしがらず、大きな声で。

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