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2015年8月26日水曜日

手紙をください

 「手紙」という概念を、息子はどこで知ったのだろう。そんな疑問を抱いてしまうほど、現代の私たちの生活に「手紙」という言葉は出てこない。
 遠方の人とのやり取りは電話かメール。年賀状くらいは出すけど「手紙」とは少し違う。私が実家を出たウン十年前は、まだ親から直筆かつ封書の「手紙」が来たけれど、今では同じ親からの便りすらメールかLINEだ。便利なものにはかなわない。

 そんな21世紀に生まれた息子。手紙のことは幼稚園で学んだのだろう。母の日にはママに、クリスマスにはサンタさんに、「おてがみ」を書く子どもたち。何のために? それは、何かを伝えるために。
 少し前までの息子は、手紙といってもせいぜい自分と相手の名前、あとはちょろっと絵を描いておしまい。「ほら、『じ』をかいたよ!」と嬉しそうに言うので見てみると、ミミズのような線がそれっぽくウネウネ。そんな調子だった。
 ところが最近、様子が変わってきた。手紙に「内容」が備わってきたのだ。「誰かに何かを伝える」ために、慣れない文字を必死で綴る息子、五歳半。早いか遅いか、それは知らない(涙)。

 それにしても「ひらがな」というのは本当に難しいのだと、苦戦する息子を見るにつけ、改めて実感する。息子は特に鏡文字が顕著で、「し」「う」「と」「ら」などが左右ひっくり返ってしまう。ある意味、器用というか。私にはとても真似できない。
 こんなにやる気があるのならと、「ひらがな練習帳」でも探そうと街へ出た私。中身をパラパラめくり、これくらいがちょうど良いのでは、と選んだ冊子の表紙には「対象年齢 4さい」。……う、うう。そして隣には「ひらがなだいすき 3さい」。そ、そうですか。ついでに横の「大人の美文字練習帳」でも買っとこうかな、は、ははは(←動揺してる)。

 母の迎えが少しでも遅れると、泣いてしまうことが多かった息子。それは年長さんになっても相変わらずで、息子はよく泣き顔のまま、担任の先生から「泣かないように頑張ろうね」と励まされていた。
 「○○せんせい」で始まる手紙を私が見つけたのは、夏休みに入ってからだった。「もーお なかないよおになりました いろいろおしえてくれて ありがとう」。字は間違っているが、「伝えたいこと」はよくわかる。息子に尋ねると、「じぶんでかいたの」と恥ずかしそうに笑った。「ハートマークもつけたよ」。私は少し感動して言った。「幼稚園が始まったら、先生に渡さなきゃね」。「うん!」。
 8月後半の夏期保育が始まった。手紙はまだ机の上にある。どうやら、すっかり忘れているらしい。ま、それはそれで仕方ない。しかし本当に息子は「なかないよおに」なったのか。勝負はまだこれからである(新学期はけっこう鬼門……)。

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