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2016年2月25日木曜日

心からの贈り物

 「いやホント、つまらないものなんで!!」。小さな紙袋を差し出しながら、私はほとんど絶叫していた。「本当に、大したものじゃないんで!!」

 「気にしないで。ウチはもう着れないし」。おっしゃる気持ちはよくわかる。私も相手の立場だったら、きっと同じことを言うに違いない。
 息子にと、お古の服を頂いたのだ。とはいえ新品同様の、相当な高級品である。差し出した紙袋の中身は、少なくとも「つまらない」ものではなかった。小ぶりで値段こそ高くはないが、相手に負担なく受け取ってもらえるよう、選び抜いた品である。
 「そう? じゃ、遠慮なく」。私の絶叫(というか懇願)に、相手の方も最後には受け取ってくださった。子どもの頃、大人たちが「つまらないものですが……」と菓子折りを差し出す場面を、幾度となく目にした。なぜ「つまらないもの」を贈るのか。
 その答えを、絶叫しながら悟った私である。

 猛威を振るったインフルエンザに、健康が取り柄の息子もついに罹患。幼稚園は出席停止、私も慌てて仕事を休む段取りを付ける。幸い症状は数日で治まり、規定通り休んでから息子は園へ、私は仕事へ復帰した。仕事関係者への手土産をぶら下げて。
 今回の目的は、お礼というよりお詫びに近い。お詫びに「つまらないもの」を贈るわけにはいかない。

 「これ、本当においしいんで!!」。私は叫んだ。誰でも病気にはなる。お互い様なのだから助け合うのは当然、そう考える人は多い。だからこそ、気兼ねなく受け取ってもらうためのひと押しだった。
 高価ではないが品があり、何よりおいしい、大好きな洋菓子。「もう大丈夫? 大変だったね」と気遣ってくれる方々に、私は心から叫んだ。「これ本当においしいんで、よかったら食べてください!!」
 「おいしかった、ありがとう」。そんな言葉に迎えられて、また仕事の日々へ戻る。ひとりじゃないって幸せだなあ、と唐突に思う。

 上京した両親が、都内の駅で「富山物産展」に遭遇したという。両親は富山出身だ。特に珍しいものはなかろうと思いきや、『月世界』があったよ、懐かしいね、と二人して嬉しそうに言う。
 富山では老舗の、贈答用の菓子だと母が教えてくれた。父や母が子どもの頃、お使いで店へ行くと、製造過程で出た切れ端を、たっぷり袋に入れて渡してくれたのだという。父が言った。「甘いものなんて食べられない時代だから、嬉しくてねえ」。
 若い頃は面倒だった贈り物文化が、今ではそうでもない自分がいる。回復すると真っ先に「○○ちゃんにもらったチョコ食べる!」と叫んだ息子は、どんな贈り物を選ぶ人になるのだろう、とふと思う。

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