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2016年7月29日金曜日

星を観る人

 「すいきんちかもくどてんかい、と覚えてね」。解説のお姉さんがそう言うたびに、脳裏に「え、めい(冥王星)は?」というセリフが浮かぶ。
 小さな違和感に囚われていると、隣席の息子の手が触れた。生まれて初めて見る真暗闇の星空(疑似ですが)は、やはり少し怖いらしい。

 冥王星が「太陽系第九惑星」の地位を失ったのは2006年。ヤマト世代の相方が「ガミラスは、デスラー総統は!?」と叫んだあの日から、もう十年。
 ぼくらの太陽系、と題された子ども向けプログラムに、冥王星は一切、登場しなかった。そうか、我が家の小学一年生は惑星・冥王星を知らずに育つのか。星空(疑似)を見上げながら、ぼんやり思う。
 区のプラネタリウムは数百円で楽しめて、冷房も効いていて図書館もある。庶民には有り難い場所だ。子ども向けのこの時間は「おしゃべりOK」。でも星空に圧倒されてか、子どもたちは案外おとなしい。

 金星まで13年11ヶ月、地球まで19年、火星まで29年2ヶ月。天空のスクリーンに数字が浮かぶ。太陽から飛行機で行った場合にかかる時間だという。子どもにも分かりやすく、という配慮であろう。
 生まれたときに出発しても大人になっちゃうね、と笑っていられたのはこの辺までで、木星まで98年11ヶ月、土星まで181年4ヶ月、海王星まで570年9ヶ月(!)となると、もう絶句するしかない。
 壮大な宇宙のロマン。さすがにピンと来なさそうな息子の両脇で「そんなに燃料、もたないよ」「そもそも空気がないと飛行機飛ばないし」と心の中でツッコミを入れる、ロマンのかけらもない大人たち。

 プラネタリウムに足を運んだのは、息子が学校の図書館で借りた本がきっかけだった。宇宙の謎を子ども向けにクイズ形式で紹介したその本に感化され、にわかに我が家で宇宙熱(?)が盛り上がる。
 施設内の図書館で「銀河系・最新版」を謳う雑誌に見入る私の横で、相方が「アポロ11号」本を読みふけっている。色鮮やかな星雲の写真、遠い星々をめぐるストーリー。そう、私も「宇宙の本」が大好きな子どもだった。残念ながら「大好き」で終わってしまったけど(文系……)、子ども向けのSF小説を胸躍らせて読んでいたのは、よく覚えている。

 いつか人類が気軽に宇宙に行ける日が来るのだと、子どもの頃は思っていた。今はもう、思わないけど。
 発展ではなく衰退への道を歩み出しているのかもしれないこの星の上で、私より先の時間まで息子は生きる。90歳まで生きたとすれば22世紀だ。そのとき息子は、何を見るのだろうか。
 冷房の効いた図書館で、星々の写真を眺めながら、そんなことをぼんやり思う。まさか宇宙人は攻めて来ないと思うけど。いや、まさかね……。

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